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最終更新日:11月25日
DORON トップページ > 特集「ポルシェ356が夢を駆け抜ける」
4月12日更新
特集 美しさに惚れる。エンジン音に心奪われる。
ポルシェ356が夢を駆け抜ける
絶世の美女を乗せ不良の匂いを撒き散らしながら、クルージング。それも、クラシックカーに限る。そんな男の夢をポルシェ356に託した。娘を誘い、都内を駆け巡る。いつの間にか大人びた娘との会話を通じ、男はわが人生とクルマの遍歴をダブらせ振り返ってみた。
そして今、人生を楽しむためのクルマを操る幸福感を味わっている。
男の原点は、いつも少年の心にあるものだ。
文: グループ・ルパン 北村 啓二 写真: 松澤 暁生
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01 不良を気取る。永遠の少年であるために02 冒険心は、男の必需品である03 そしてもうひとつの、人生における必需品
01 不良を気取る。永遠の少年であるために
男にとって、クルマは永遠の憧れである。もちろん、そこらを走っているクルマではいけない。それが、高級車であろうが憧れの対象にはならない。スポーツカー。誰もが振り返る、スポーツカーの助手席には、絶世の美女を乗せ、ちょいワルの臭いをまき散らしながら走る。それこそ、男の夢なのである。

私は、セカンドカーとしてポルシェ356を手に入れた。1960年代に生産されたポルシェの原点、いやスポーツカーの原点ともいうべきクルマ。このクルマに出会ったとき、私の心は少年の頃の熱い思いが蘇り、そのエンジン音に鼓動が高まった。これからは日常を捨て去り、休日は大人の不良と化し、冒険に繰り出すのだ。
ところが、幸か不幸か私には、絶世の美女と友人になれる度量は持ち合わせておらず、エンジンの調子を試す第1回目のツーリングは、今年、社会人となった娘をナビゲーターとするほか無かった。
「古いクルマを買ったなんていうからちょっと心配だったけれど、すごいじゃない」
娘はちょっと驚きの表情を見せ、それはすぐに笑顔に変わりクルマに乗り込んできた。
「どうだ。お父さんの趣味もまんざらじゃないだろう」「うん。見直したよ。でも、ちゃんとお母さんも乗せてあげたの?」
まだ肌寒い4月にもかかわらず、意外と風が入り込まない。ポルシェの流線型は伊達ではない。全ての走りを計算し尽くしたフォルムとデザインの見事な調和を感じる。

アクセルを踏む。エンジンがうなりをあげる。ピストンの動きがそのままタイヤにダイレクトにつながるような心地よいレスポンス。スポーツカー特有の堅めのサス。40年も前から完成されたモノコックボディ。クルマは、お台場へと向かう。
どちらが親か解らない会話。次第に妻に似てきた娘の横顔を伺う。タイムスリップしたような感覚に、妙に甘酸っぱい感傷が幸福感となって心に広がる。
「イヤ。初めてのツーリングはおまえを乗せると決めていたんだ。今度の休日にはお母さんと箱根に行くことになってる」
「まあ、他の女性を乗せたいなんて思うよりいいけれどね」
・・・私は、正直どきっとしながらもクルマを発進させた。
60歳を超えて、悠々自適の暮らしの中で、私は趣味として、芸術品とも言うべき美しさを備えたクラシックカーを選んだ。小さなクルマから始まり、その時々の生活にあわせて乗り換えてきた多くの遍歴を通して、クルマたるものが何かをいくらかは理解してきたつもりだ。

クルマというものは、元来、走る道具である。百年の歴史の中で、利便性が追求され、目を見張るほどに安全で快適な移動が可能となった。

だが、クルマを趣味として考えると、それだけでは、決して高揚感を味わえないのである。クルマに乗ること。運転すること。風景を含めた空間とクルマと私が一体化すること。所有する喜び。そういった快楽に溺れてみたい。

で、私は仕様に表れた性能云々よりも自分の心の欲するクルマをセカンドカーとして選んだわけだ。スタイル、カラー、エンジン音、シートの作り、スピードメーターの針の作りに至るまで、私を満足させる車種はクラシックカーをおいてなかっただけなのだ。
クラシックカーといっても、動かなくては意味がない。あまり安物を手に入れても、故障ばっかりでは悲惨だ。
「革ジャンにサングラスなんて、おじいさんに見えないよ」「まだ、俺はおじいさんじゃないぞ。おまえがお父さんを見る目が今まで無かったってことだよ」「ううん。お父さんが急に素敵なおじさま目指したってことかな」
相変わらず減らず口をたたく娘に、私は、娘との数々のシーンが蘇ってくる。
娘さんとポルシェでデートなんて生意気
人生を知り尽くした男を満足させたのは、クラシックカーだった。
おしゃまではにかみやだった幼女時代。私のあとのお風呂には絶対入らなかった中学時代。何かしら反抗的だった高校時代。1人住まいをはじめた大学時代。娘は、私の誕生日に必ずプレゼントを贈ってくれるようになった。そして今、娘は東京の商社で頑張っている。

お台場に向かうレインボーブリッジ。栗毛色の髪が潮風になびく。そんな娘の姿が、まぶしい。数年たてば、嫁いでいくだろう。あるいは、堪能な語学力を活かして、海外勤務になるかもしれない。私がクラシックカーを手にしたのは、娘とこんな時間を持ちたかったことも理由のひとつである。
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この情報は2006年4月12日現在のものです
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